暮らしのガイド
2012/04/13 UPDATE
50代は知らないと損する年金の受け取り方
「年金」ガイド
:和田 雅彦
■ セカンドライフの収入の柱はやはり「年金」
人間誰しも50歳を迎えると、そろそろセカンドライフに思いをはせることがあると思います。
「いや、まだまだ」「10年も先のことなんて、考えている暇はないよ」と言う方もいるかもしれません。
しかし、60歳時点の平均余命は男性が22.84歳、女性が28.37歳(平成22年 簡易生命表)と、セカンドライフの期間はとても長いのです。この時期をいかに充実したものにできるのか、それが自分の人生の充実度そのものを左右するほど重要になってきます。
セカンドライフを充実したものにするには、「生きがい」と「お金」が必要。セカンドライフの柱である公的年金の知識は、ある程度持っておきたいですね。そこで、50代の方にこそ知ってほしい年金の知識をご紹介します。
■ 公的年金は原則65歳から支給。繰上げ、繰下げでの受け取りも可能
我々が老後受け取る公的年金は、2つの種類があります。1つは全国民が加入する「国民年金(老齢基礎年金)」。もう1つは会社員が加入する「厚生年金(老齢厚生年金)」です。
ちなみに公務員は「共済年金」に加入します。会社員は国民年金と厚生年金の2つの制度に加入していることになります。
いま50代のみなさんは、この2つの年金が原則65歳から支給されることになります。60歳で定年退職した後、働かないとすると、60歳から65歳まで無収入に。この「空白の5年間」をどう過ごすかを考えておく必要がありますね。
原則65歳から支給される年金ですが、早く受け取りたい場合は最大5年間繰上げて受け取ることも可能です。
ただし、1ヶ月前倒して受け取るごとに0.5%減額され、5年間前倒して受け取ると、30%一生涯減額されてしまいます。
逆に繰り下げで受け取ることも可能。繰下げることで、最大42%増額されます。
そこで何歳から受け取るのが得なのでしょうか? ちょっと試算をしてみましょう。
■ 繰上げ受け取りは、避けたほうがよい
基本的に長生きすればするほど、繰上げたことによる減額の影響が大きくなります。例えば自分の年金額(1年)が100万円として、84歳まで受け取ったと仮定して考えてみます。
もし5年間繰上げて受け取るとすると、60歳から84歳まで受取年数は25年となりますが、年金額は30%減の70万円で総額は70万×25年=1750万円となります。
65歳から通常通り受け取るとすると、受取年数は20年と短くなりますが、満額の100万受け取れます。そうすると、100万×20年=2000万円。この場合、繰上げると「損」ですね。
受取年数については、自分の寿命によるので何ともいえないですが、長生きすればするほど、繰上げるとかなり損であることがわかります。
請求漏れが多いといわれている、いま話題の厚生年金基金。漏れをなくす方法を次で紹介しましょう。
■ いま話題の厚生年金基金の請求漏れにも注意!
あと、注意が必要なのが最近、話題の「厚生年金基金」。厚生年金と厚生年金基金。同じ厚生年金の言葉があるため、全く同じ制度だと思われている方も少なくありません。
しかし、厚生年金は国が運営する「公的年金」であるのに対し、厚生年金基金は企業が運営する「企業年金」とカテゴリーが違います。厚生年金の請求とは別に、この厚生年金基金の請求をしなければなりませんが、この基金の請求漏れが多いと指摘されています。
理由として、
1.厚生年金と名前が紛らわしいため、自分が厚生年金に加入したことは理解しているものの、基金にも加入しているという意識がない
2.別々に請求する必要があることを理解していない
3.基金がある会社に複数勤務している場合は、複数の基金に請求する必要があることを知らない
厚生年金基金は、厚生年金本体の給付の一部を受け持っているため、基金の請求を忘れると厚生年金本体の年金の一部も受け取れないことになります。基金の加入履歴をしっかり確認し、加入していた場合は基金の請求も忘れないで行ってください。
なお、会社員の皆さんがすべて基金に加入しているわけではありません。基金は企業ごとに設立している(同業種共同で設立している場合もあり)ため、転職したことがある方は複数基金に加入していることもありえます。
そうなると、基金ごとに請求することが必要な場合もあります。請求方法はそれぞれの基金に確認しておきましょう。
■ 超えておきたい年金の「壁」とは?
公的年金は、基本的に加入期間に比例して受給額が増えるシステムになっています。
しかし、受給資格期間があって、原則25年(300月)以上加入(保険料を払うか免除してもらう)しなければ1円も受け取れないのです。
加入期間が299月だと受け取れる年金は0円となり、299月と300月では1ヶ月しか変わらないのに、とてつもなく大きな「壁」が存在しています。ですから、300月の壁は何が何でも越えてください。
老齢厚生年金には、65歳未満の配偶者や18歳未満の子がいることで「加給年金」という年金がつくことがあります。
この加給年金の額、生年月日にもよりますが、65歳未満の配偶者がいるとその配偶者が65歳までしか受け取れないとはいえ、受給額は年間40万円ほどにもなります。
この加給年金が支給される要件の一つに、「厚生年金の加入期間が原則20年(240月)以上あること」があります。厚生年金の加入期間が239月なら「加給年金」はつかないことになります。先ほどの加入期間「300月の壁」と同じく、「240月の壁」もぜひ越えておきたい壁なのです。
最後に、受け取る権利があっても、年金は勝手に振り込まれることはありません。請求しなければ受け取れないシステムになっています。自分の加入している年金を把握し、請求漏れをしないことが損をしない受け取り方の基本中の基本といえそうです。
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年金の受け取り方
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