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音楽で日本と中国の友好に貢献→宋茜

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日中つなぐ童謡の力
 
2014年10月21日 05時00分
 
◇上海出身のソプラノ歌手 宋茜さん
 
 
「音楽で日本と中国の友好に貢献したい」と語る宋茜さん(奈良市で)
 
 
 「歌で日中友好の懸け橋になりたい」。
 
中国・上海出身のソプラノ歌手宋茜さんは、奈良教育大大学院で日本歌曲を学び、知人や友人に支えられて毎年、リサイタルを開いてきた。
 
奈良市に移り住んで20年。
 
4年前には、日本国籍を取得した。
 
「中国出身だからこそできることがある」
 
と、大好きな日本の童謡や中国の流行歌も交えて歌い上げ、互いの文化を伝える。
 
(森安徹)
 
 
 宋さんは、名門音大の上海音楽学院で声楽を専攻。
 
卒業後、就職した地元のテレビ局で音楽番組の制作に携わり、歌手としても各地でコンサートに出演した。
 
 
 1992年、私費留学生として来日。
 
日本歌曲を学ぶのが目的だったが、後にこれが人生の転機になる。
 
 
 94年に奈良教育大大学院修士課程に進学。
 
「2年で帰国するはずが、日本の童謡にすっかり魅せられて。気がつけば、居着いてしまいました」
 
と笑う。
 
 
 感銘を受けた童謡に、野口雨情作詞の「しゃぼん玉」(1922年)がある。
 
 「しゃぼん玉飛んだ 屋根まで飛んだ 屋根まで飛んで こわれて消えた
 
 しゃぼん玉消えた 飛ばずに消えた うまれてすぐに こわれて消えた
 
 風、風、吹くな しゃぼん玉飛ばそ」
 
 
 後世に歌い継がれる名曲は、雨情が生後8日で亡くした長女をしのんで作ったという説があると、宋さんは言う。
 
小さな命が魂になって大空に飛んで行けるように、風よ吹くなと。
 
 
 「悲しみをこらえ、前向きな気持ちでいようとする最後のフレーズが印象的。何気なく思える童謡の詞や曲には、日本人の繊細な心が反映されているんです」
 
 
 96年、全国童謡歌唱コンクールに出場。
 
「里の秋」(斎藤信夫作詞)を歌い、外国人で初めてグランプリの金賞を受賞した。
 
「夏の思い出」「めだかの学校」で知られる作曲家の中田喜直さん(1923~2000年)に
 
「日本の心を日本人以上に歌ってくれた。童謡を世界に広めてほしい」
 
と、講評で励まされた。
 
 
 同年、友人らが後援会を結成し、年1回、リサイタルを主催。
 
宋さんは、日本の童謡のほか、中国の歌を披露し、民族衣装も着て故国の文化を紹介してきた。
 
 
 「聴きに来た日本の人が中国語で一緒に歌ってくれるようになった。私の使命は『歌の親善大使』」
 
 
 95年の阪神大震災、死者・行方不明者が8万7000人に上った2008年の中国・四川大地震、そして東日本大震災……。
 
被災地復興を願って日本でチャリティーコンサートを催し、中国で舞台に立つ時は着物姿で日本の童謡を披露した。
 
 
 日本政府が尖閣諸島を国有化した12年9月には、交流行事の延期や中止が続く中で、
 
「民間交流の火を消してはいけない」
 
と日中国交正常化40周年記念のコンサートを奈良市で開いた。
 
 
 「空気がきれいで落ち着いたまち」
 
と奈良に愛着を感じ、4年前に帰化。日本名を「飛鳥茜(あかね)」とした。
 
 
 「来日当初、カラオケで韓国の歌はあるのに、中国の歌はなかった。今は多くの曲がある。文化交流に私も少しは貢献できたかな」
 
 
◇訪れるきっかけに
 
Q 日中友好に音楽は力になりますか?
 
 両国の文化交流は昔から続いています。
 
漢字も箸もルーツは同じ。
 
中国には、日本のアニメや音楽が大好きな人がたくさんいます。
 
日中関係は良好ではありませんが、長い目で見てほしい。
 
教え子の一人は中国へ旅行に行き、
 
「みんな親切にしてくれた」
 
と印象が変わったようです。
 
百聞は一見にしかず。
 
両国でのコンサートはずっと続けます。
 
聴いてくれた人が「1度訪ねてみよう」と踏み出すきっかけを作りたいんです。
 
 
<メモ>
 
宋茜(そん・ちぇん)
上海生まれ。
来日前、中国で1500回以上のコンサートに出演。奈良教育大大学院修士課程修了。現在は阪南大講師。
 
 
<取材後記>
 
童謡の魅力を熱く語る姿が印象的でした。
 
しかし、日本の若者の童謡や唱歌への理解は、心もとないようです。
 
宋さんが学生に歌詞の意味を問う課題を出した際、半数以上の解答は間違いだったといいます。
 
「そうしゅんふ早春賦」(吉丸一昌作詞)の歌詞をひらがなで記し、漢字にする出題では「春は名のみの 風の寒さや」を多くの学生は「菜のみ」と解答したとか。
 
私自身もどれだけ正解できたか、正直、自信はありません。
 
日本の文化を学ぶ必要性を痛感するとともに、童謡の楽しさも知ることができた取材でした。
 
2014年10月21日 05時00分 
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